SSブログ

2つのシナリオ [Argentina 2017]

 先日書いたフランスの第一回大統領選挙結果はマクロンとルペンが勝ち上がったということで、メディアではもはやマクロンの圧勝と書かれている(第一回投票前の事前アンケートで、すでにもし決選投票でふたりが選ばれた場合はどちらに投票するかという結果が出ていた)が、どこまで接戦となるかは別にして決選投票でのマクロンの勝利は我々の理想や希望も含めて確かなように思える。(極右との二者択一ならフランス国民はその対抗馬を選ぶだけの良識を持ち合わせているはずだという図式)
 もちろん、それが万が一にも51:49になるようなら、やはりそれは多数決主義の弊害であることは論を待たない。
ただEUを中心に加盟各国はホッとしているし、ともかくも英国は5月のフランス決選投票を待たざるを得ないが、それでもEU崩壊のシナリオは描き損ねたとするのが一般的な予想だ。あとは6月の英国国民の独自の判断によるだけとなった形だ。保守党の勝利は動かないにしても議席を増やせるかどうかは相変わらずわたしは疑問だと考えている。(もっともわたしは予想屋ではない。笑)

さて、そんなこんな世界の動きを眺めながら2つのシナリオに気づいた。
正確に言えば、2つのシナリオの可能性があるという事態についてだ。実現性は保証しない(笑)。可能性の世界だ。

ひとつはEcuador経済危機、そしてもうひとつは北朝鮮危機についてだ。

Ecuador経済危機については、コレア前大統領の子分であるレーニンが大統領になる以上、シナリオとしては中国支援が決定的だと思っていた。場合によっては最悪中国通貨ウォンの導入というやつだ。だがもうひとつのシナリオの存在に気づいた。それは根本的な解決にはならないけれど、ウォン導入の為の準備にはなるかも知れないし、一時的な国庫の助けとなる可能性はある。
 それは自国通貨スクレの復活だ。かつて2000年までEcuadorは自国通貨スクレを持っていた。当時の大統領ハミル・マワがドル化政策に舵を切った訳だが、もちろん、それはスクレの信用失墜によるものだった。今回はそれを逆手に取る作戦だ。同じように現在もEcuador経済は破綻の状況を示しつつあるけれど、ドル経済である以上、そしてIMFなどに対する国際借款がない以上、破綻が表面化しにくい。自国通貨を持っていればとっくに破綻し、ベネズエラのようにハイパーインフレと決定的なモノ不足に陥っているはずだが、ドル経済はそれを顕在化させにくい。だが顕在化しないことには荒治療もできないのが実情だろう。

 シナリオはこうだ。。。或る日何の前触れもなく、非常事態宣言と共に、Ecuador国内のすべての金融機関窓口が数日に渡って閉鎖される。
そして自国通貨スクレの導入が発表され、すべての口座預金は(政府の指定した換金率で)スクレ化されてしまう。政府は極秘に印刷しておいたスクレを金融機関に引き渡し、強制的にドルを徴用する形だ。
 もちろん、通常で考えれば、すぐにスクレは暴落する。国民の預金は紙くずとなり、国内はハイパーインフレに見舞われるが、国庫は取り敢えずドルで満たされ、金準備金として蓄えられる。ハイパーインフレがどう動くかはやってみないと分からない。
 そしてハイパーインフレが頂点に達したと判断されたところで中国ウォンの導入となる。もちろん、再びウォンとの交換換金率は政府指定となるから、富裕層を中心とする国民の懐は空っぽとなる。そしてウォンの導入で徐々に落ち着きを取り戻してゆくというシナリオだ。それは中国にとってもドルから直接ウォン経済へ乗り換えるより容易いし、国民にも最後の唯一の解決策として導入を理解されやすいだろう。もちろん、国民は反大統領で団結し、レーニンは解散を余儀なくされるだろう。だが非常事態宣言はどこまで有効かは分からないが、暴徒を武力で抑え込むことも一時的には不可能ではないだろう。
 だがもし解散退陣に追い込まれようと、そんなことコレアにしてみればなんでもない。寧ろ、自身の責任論は棚上げして、混乱した社会を取り戻すと予定より早く再登壇することも可能になる。ひょっとするとコレアによって解決策として、ウォンが導入されることになるかも知れないし、富裕層の蓄財を吐き出させ、懲らしめる為には必要な荒療治だったのだと屁理屈をこねるかも知れない。選挙なんぞ不正を行えば、どんなことでも可能だ。
 もちろん、ハイパーインフレで経済破綻が表面化した時、西側国際社会(未だにこんな言い方が罷り通るのかどうか知らないが)に支援を求める道もないではない。だがコレアを後ろ盾とするレーニンがそれを選択するとは考えにくい。

 ベネズエラの現状を見ていれば分かるが、中国の援助だけでは国を立て直せないことが明らかになりつつある。スクレ・ショックに続く、ウォン・ショックという二重の荒療治によって、富裕層の蓄財を取り上げ、清算し、あまつさえ早期の再登壇をと図るシナリオだ。そんなシナリオ通りに事が運ぶ保証はどこにもないが、他にどんな方法も持たないEcuador政権にとってはそれもひとつの選択肢だということだ。
 原油価格の上昇以外にどんな解決策も示し得ないEcuador政府にとっては、時間稼ぎ以外にどんな政策もない。時間を稼ぐ為にも、或いは次の一手を打つ為にも、その準備としての自国通貨復活は"泥棒政策"として唯一の選択肢となるかも知れないという可能性だ。

さて、次は北朝鮮危機だ。

全般的にはつい先日書いた通りだ。
"後のことを考えたらとてもそんな混乱を処理する能力なんぞ何処の国にもないので、押しとどめられてきた"、"北朝鮮の崩壊後の未曾有の混乱はどの国家にも対処しきれないものとなる。以前にも書いたように、韓国はどんなに併合を望んでもそれだけの経済的余地は持ち合わせていないし、中国が併合を望めば、新たな火種となるしかない。ロシアが国境の安全性を理由に一部を併合支配する可能性も決して薄くない。"、"新たな国境線はピョンヤンを巡る新たなベルリンの壁を生み出すかも知れない。"という見立てに変わりはない。

けれど、もう一歩突っ込んでみれば、北朝鮮の不可欠性はさらに重大な意味を持つ。

上に書いたように、北朝鮮は韓国(=米軍)と中国、ロシアに楔を打つような形で存在する。北朝鮮が消滅するようなことになったら、この3国は国境を接することになるというのは避けられない事態だ。
 中国もロシアも共に、両国の国境が接することは望んでいない。それは両国にとって新たなより大きな問題を抱え込むことになるからだ。況してやロシアにとっては首都から遠く離れた辺境の地だ。そこでの問題はとても厄介なものとなる。
 韓国(米国)にしても中国やロシアと国境を接するなんてもう本当に願い下げだろう。
難民の流出、流入のみならず、スパイ工作の激化や国境紛争の発生などを考えると、どうあっても北朝鮮はそこに存在しなければならない国なのだ。中身なんぞどうでもいい。どんな体制でもいい。北朝鮮国民などどうなろうと知ったこっちゃないから、米国を含む周辺国の思惑としては、ともかく中国でも、ロシアでも、韓国=米国でもない、独立した国家としてそこに存在し続けることに意義があるのだ。

 だとしたら、いったいどんなシナリオが存在するだろう。
もちろん、金正恩の退位は避けられない事態となりつつある。それは彼自身が招いた事態だ。彼がこの力関係を理解していれば、ただ援助を求めるだけで良かったかも知れないものを(援助合戦すら考えられた訳だ)、それをまったく理解しない彼は(彼とその先代たちは)各国に対して敵対行動ばかり取ってきた。もはや後戻りが効かないほどに、だ。

 三竦みの中で、一番手を出しやすいのは中国だろう。金正恩が同盟国として中国に軍の派兵を依頼すれば、中国は堂々と平壌へ駐軍できる。もちろん、ロシアも韓国も歓迎はしないし、非難声明を出すだろうが、そうやって金正恩の首根っこを抑えて、彼の退位まで十年掛けてでも追い込んで、新しい体制作りをし、その後に撤退するというシナリオを三国(韓露米)に対して明示できれば、文句は言っても指をくわえて手出しせずに見ているしかない。もちろん、その後の体制は親中国、或いは傀儡政権ということになるだろうから、火種は尽きないけれど、ともかくもこの核騒動と危機は収めることができる。
 問題は中国の取り組み姿勢だし、そもそも北朝鮮政府からの要請なしには機動し得ないという点だ。
その為には北朝鮮にプレッシャーを掛け続けることしかないが、そこで厄介なのは北朝鮮の核保有幻想を周辺国がよってたかって(韓国、米国、日本)現実であるかのように仕立てあげてしまったことだ。北朝鮮はその幻影に乗って虚勢を張っている。

どういう訳だが、本当に始末が悪いけれど、中国政府は北朝鮮の核保有を容認しないと何度も発言しているにも関わらず、米国に支配された国際メディアはそういう発言を大きく取り上げない。すなわち核はまだ保有されていないということだ。米国も何度か政府関係者が似たような発言をしている。北朝鮮が核攻撃能力を保有したと判断した段階で北朝鮮は終わりだ、というような発言か先日もあった。(改めて探してみたが見つからなかった)。。。そもそも、1998年、パキスタンが核実験を公開した時、世界は事実上その最初のたった一発で(連続して行われたが)、パキスタンを核保有国と認め、即日と言ってもいいくらい直ちに、核不拡散条約への加盟すら求めた。北朝鮮が本当にすでに核開発に成功しているなら、曖昧なまま何度も核実験を繰り返す必要などない。ことは自明ではないのか?。。。張り子の虎を膨らませるだけ膨らましてもはや後戻りが効かなくなってしまったのだ。だからあちこちでチグハグな発言が漏れる訳だ。
 ※当時、一部の扇動家たちが、パキスタンの核実験は北朝鮮の核の代理実験だとまで主張したが、ならどんな理由があって、2017年の今になっても北朝鮮は核実験を繰り返すのか?(笑)

 この架空の核の脅威は、米国、日本、そして北朝鮮の三者にとって、とても有意義な構図だった。北朝鮮はいまだに国際社会が核保有の幻想を信じていると確信しているようだが、もちろん、米国も日本政府もそんなこと信じちゃいない。信じているのは日本国民だけだ。(どうやら韓国ですら信じちゃいない様子だというのに。)だが今更、米国は北朝鮮は核なんぞ持っていませんでした、とは言えないのだ。もちろん、その陰で時間稼ぎをしながら北朝鮮はなんとかしてホンモノの核を保有しようと必死に核開発を進めているが未だに成功していないというのが実態だろう。だが北朝鮮政府が自分たちのハッタリが世界に通用していると考えている限り、上のシナリオにあるような形で中国に軍隊の派遣を求めることなどないのが実情だろう。それがこのシナリオの実現を妨げている。
 
 それはともかくも北朝鮮が存在し続けなくてはならないという構図は変わらない。あとは北朝鮮内部での軍事クーデターの可能性だが、これもまた金正恩の度重なる粛清で、その芽は摘まれ続けてきた。外国政府と接触した者は直ちに疑いを向けられるので、スパイ活動も個人単位ならいざ知らず、軍隊を動かすまでのスパイ工作が成功する確立は現在のところ見込めないでいる。そもそもどの国(米国、ロシア、中国)の支配下でクーデターが行われるかでその後の他国の反応と危機の構図は大きく左右されるから、それもまた各国が牽制し合い二の足を踏む材料となっている可能性がある。誰も新たな危機の構図を自ら率先して創り出したくはないのだ。
 もはや米中ロの三国が金正恩と直接会合を持って、彼の王国を認めてやる代わりに一切の敵対行為をやめろと説得するしかない。ところが、そんなことは韓国政府と国民が絶対に認めようとしないし、おまけに米国は日本から駐留軍隊を撤退しなければならないハメになる。或いは中国の危機を煽るかだが、相手はデカ過ぎるに、国際貿易上、もはや中国は巨大な取引相手の化してしまった。それに金正恩がいつ密約を公表しないとも限らない。それほどまでに信用するに値しないとみられているはずだ。

 そんな訳で北朝鮮に関するシナリオはどれも実現は難しい。。。
一旦、戦闘の火蓋が切って落とされれば、金正恩に最後まで付き従う北朝鮮軍の兵士はほとんどいないと思われる。本格的な戦闘行為は3日ほどで終わる可能性すらある。
 けれど本当にその後が問題なのだ。そうなった場合、一番可能性が高く、もっとも周辺国の思惑に合致しているのは、米韓軍の空爆開始からほどなくして、完全落城前に、中露が待ったを掛けて、金正恩を保護=軟禁してしまうことだ。その上で北朝鮮のその後についての話し合いを金正恩抜きで4ヶ国が話し合い、平壌付近までを韓国に併合し、平壌以北を中露の管理管轄区域としたのち、武装解除・放棄の小国として北朝鮮を存続させ、金正恩に統治させるというような形だ。韓国の南北統一という悲願は達成されないから韓国はまだまだ納得しないだろうけれど、人々の移動を含め、離散家族の移住は果たされることになるだろうし、北朝鮮がゆるい社会主義国家として韓国に対しても開かれた扉を持つ国となるならば、(政府にとってはとても厄介な存在の)韓国国民はともかく、韓国政府としても不承不承でも条件を呑まざるを得ないだろう。

 ちなみに金正恩がこの後に及んで、日本を名指しして危害を宣告するのは、従来の日本政府の及び腰を知っている所為で、脅せば日本政府が米国政府に取り入って危機を拡大しないように取りなしてくれると考えている節がある。安倍晋三が底抜けの(想像力の欠如した)極右だとはまだ信じられないのだろう。今一つは万一、攻撃せざるを得ないとしても日本なら韓国の宿敵でもあるから、韓国政府は過剰には反応しないはずだという微妙な読みすらあるかも知れない。自国の本気度を見せつけるだけの目的なら、韓国本土に一発ぶち込むと脅すより日本を脅した方がリスクが少ないという考えだ。もちろん、米軍の存在が大きく影響しているのは事実だろうけれど、なんと言っても韓国国内にも規模はやや小さいながらも駐留米軍はある訳で、本気で戦争を始めるならまず最初に韓国国内の基地を叩くのが常識だ。正確に届くかどうかも分からないようなミサイルを沖縄に向けて発射するよりも、韓国国内に一発(もし原爆を持っているなら原爆を、だが)落とせば、ひょっとしたら状況が一転するかも知れないと彼が考えるのは道理だろう。もしも彼らが本当に核兵器を開発済みだというなら、余計な脅しは不要だし、米国と雖も不用意に恫喝したりはせずに、懐柔を試みるものだ。

 だがメディアは誰も北朝鮮は核なんて保有していないとは言えない。。。万が一の時にそんな責任は負えないと考えるから政府広報を垂れ流すのが一番の責任逃れなのだ。それになんと言っても時間稼ぎの傍らで北朝鮮は核開発を進めたいと望んでいる。その可能性はほとんどないと思われるが、それでも明日成功する可能性はゼロではないとしたら(わたし個人の見解としてはゼロだと言っておくが)、メディアとしてはそれを発信するのは相当の覚悟がいる。すべての情報は米国諜報部から齎される。独自に観察・収集したものはなにもない。米国筋から北朝鮮が核開発をしていると言われれば、それを否定できないし、北朝鮮が核兵器を持っていると言われてもそれを否定できない。北朝鮮が大陸間弾道弾を完成させたと言われればそれを信じるしかないし、北朝鮮が水爆を持っている(核保有の後に出てきた情報としてはおかしくはないか?)と言われれば、それを信じるしかない。
 すべての情報ソースは米国衛星情報を解析したという米国諜報機関なのだ。
そんなものに振り回されているのだということだけは100%真実だということ。

 何を信じるかは個人の自由であり、個人の責任だ。信じるということには少なからず責任が伴う。
人々は政府見解を信じた方が"自分は騙されたのだ"と言い訳できると思うようだが、そうではなく、責任は同じだけある。
 敢えて言うならば、わたしは信仰の自由よりも、思想・思考の自由を選ぶ。
単に"誰かや何かを信じる"よりも"自分自身で考え"辿り着いた結論を信じるということだ。

nice!(2) 
共通テーマ:旅行

nice! 2

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。